<入試科目の掲載について>
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私立

とうきょうこうか

東京工科大学

東京工科大学大学からのお知らせ ゼミ研究室紹介

掲載している内容は、2021年8月時点のものです

工学部 機械工学科
材料グリーンプロセス研究室

材料グリーンプロセス研究室の1枚!

このアルミニウムの六角棒、ねじってねじり戻すとまた元の形に戻りますね。これで何か変わるのですか?

実は棒の表面が1.5倍ほど強くなっています。これがねじり・ねじり戻し加工に伴う原形回復と高強度化であり、これを応用して環境に優しい「材料グリーンプロセス技術」を開発しようとしています。

ねじってねじり戻すだけで……魔法のようですね。強くなると環境に優しくなるんですか?

なります! 強くなれば、それだけ原材料を少なくできますから。それだけではないんですよ…

製造からリサイクルまでの環境負荷を減らすために
材料の組織を微細化して特性を最大限に引き出す

研究テーマ

アルミニウム棒をねじり、「結晶粒」を小さくして強度を上げる

私たちの生活は様々な物質によって成り立っている。巨大なタンカーや高層ビル、はたまた半導体チップに使われる微細なパーツも、様々な金属元素から作られている。こうした金属材料はだいたいひとつの元素(純金属)ではなく、複数の元素が組み合わさった合金である。その方がメリットが大きいからだ。

例えば、アルミニウムという元素は鉄より錆びにくく、加工しやすい上、重さも鉄の3分の1程度と鉄に比べてメリットがたくさんあるが、強度が3分の1しかない。しかしアルミニウムにマグネシウムという元素を加えて合金化すると強度が2倍になる。さらに銅を加えると3倍、亜鉛を加えると4倍から5倍になる。同じ強度で軽く、錆びにくいとなれば、その用途が広がる。

現在使われている材料はこのように元素の種類や量を増やしながら、材料の特性を高めてきた歴史がある。しかし、合金化や複合化が進めば製造の手間やコスト、時間がかかり、リサイクルしにくくなる。また、製造途中のCO2排出量も増える。

古井先生の材料グリーンプロセス研究室では、材料に含まれる元素の種類を減らしながら材料の特性を上げる研究を進めている。そのひとつの考え方が「組織の微細化」だ。

「材料の組織を微細化すると材料特性が上がるんです。金属を顕微鏡で観察すると原子の塊である結晶粒が見えるのですが、この結晶粒を小さくする、つまり結晶粒微細化すると強度が増すのです」

よく刃物などの製造の際に職人が叩く「鍛造」という工程があるが、これはまさに結晶粒を叩いて小さくし、強度や靭性(粘り強さ)をつける作業になる。

古井先生の研究室では材料をねじってねじり戻すことで結晶構造を変えたり結晶粒を小さくして、強度を上げる研究を進めている。「アルミニウムの場合、ねじることで2倍の強度になり、戻しても1.5倍になります。形を変えずに材料が持つ能力を最大限に引き出す加工法なので、資源を無駄にせず、リサイクルしやすくなります」

ただ、ねじり・ねじり戻しの場合、中心部になるほどねじりの力が弱い。そのため古井先生が利用を考えているのが、中が空洞になるパイプの強化だ。またネジも表面の強度を高めると締めつけるトルクが増すので、しっかりと締めつけることができ、脱輪などの事故のリスク削減や軽量化が期待されている。

研究の特徴

リサイクルまでの環境負荷を計算して最適な材料を選ぶ

このほか古井先生の研究室では航空機ジェットエンジンのタービンブレード(羽)を耐熱性に優れたセラミックス複合材で作る研究も行っている。「実現できれば、ジェットエンジンの燃焼温度を上げることができ、発電など他の産業にもメリットが広がるでしょう」

東京工科大学工学部では、製品の製造だけでなくその輸送、使用、使用後の廃棄、リサイクルまでのマテリアルフロー全体の環境負荷を考えたLCA=ライフサイクルアセスメントを学んだうえで、材料の設計や加工などの専門研究を進めている。

「単に新しい、良い材料を作り利用するだけではなく、学生はどの材料をどのように使えば環境負荷が少なく、経済効率が高いか計算や解析をしたうえで、用途に応じて材料を選ぶ適材適所の概念を念頭に置きながら研究を進めています。こうした知識や技術を身につけた卒業生は様々な企業で活躍しています。

材料グリーンプロセス工学はまだ歴史の浅い研究分野ですが、社会にはちょっとした工夫で特性が劇的に変わる可能性に満ちた材料がまだまだあります」

ITやAIが進んでもその便利さを体感できるモノがなければ、生活は豊かにならない。そのモノやモノヅクリを支えるのは様々な特性を持った材料だ。古井先生は「できれば高校生・受験生の皆さんには、パソコンやスマートフォンだけでなく、実際に世の中にあるモノに触れて、分解したり組み立てたりしてみて、バーチャルとリアルとのギャップを楽しんでほしいです。そういった体験はきっと工学全般の学びに役立ちますし、ひらめきのもとになるはずですから」とエールを送る。

ねじり調製したマグネシウム合金の室温転造ねじ

室温で転造したマグネシウム合金ねじ(左:ねじり調製なし、右:ねじり調製あり)。転造の前にねじり調製を行うことによって、マグネシウム合金ねじが室温で転造できるようになり、さらにねじりトルクも増加することがわかった。

指導教員 古井 光明 教授

東京工科大学工学部機械工学科長。長岡技術科学大学大学院工学研究科博士課程修了、豊橋技術科学大学、名古屋大学、富山大学工学部助手、富山大学大学院理工学研究部准教授を経て現職。工学博士。専門は材料工学、材料プロセス、組織制御、電磁気冶金など。

このページに関するお問い合わせ

大学・部署名 東京工科大学 広報課
Tel 0120-444-903
E-mail pr@stf.teu.ac.jp

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