現代文
2023年度入試の問題分析
ここでは3教科A方式について紹介する。国語の問題は4題からなり、順に漢字の選択問題と読み(各5問)、小説、古文、評論という構成である。試験時間は70分なので、漢字を除く1題あたり20分強が使える計算だ。問題文の分量は1題につき3,000字前後であり、入試問題として標準的な長さである。小説では昭和中盤に書かれた辻邦生『眞晝の海への旅』の一節が、評論では瀬尾佳美『リスク管理と民主主義』の一節が、それぞれ出題されている。いずれも特に難解な文章ではないので、丁寧に読み、内容を確実に把握したい。解答形式は記述式・客観式の併用。小説および評論問題の出題内容は、語句の意味、空欄補充、抜き出し、傍線部の説明問題、本文の趣旨に関する問題など典型的なものが多いが、小説、評論で1問ずつ、それぞれ60字以内、80字以内での記述説明問題が出題される点が特徴だ。また、文学史の客観問題に加えて、2023年度入試では設問内に設けられた会話文の空欄を埋める、共通テスト風の新傾向問題も見られた。全体的な難易度としては標準的である。
2024年度入試対策・学習アドバイス
漢字の学習はおろそかにしない
漢字の読み書きが5問ずつ出題されているが、やや難のレベルであり、対策の充実度で差がつく。漢字対策の問題集を決めて反復練習するなどし、知らない漢字を減らし得点源にしてほしい。
語彙力もしっかり身につけよう
各日程とも、空欄補充問題がふんだんに出題されている。本文の文脈の理解が重要であることはいうまでもないが、選択肢に並んでいる語句の意味の理解が決め手となる問題が散見される。頻出用語を集めた参考書などを1冊決めて取り組み、語彙力の向上を図ろう。
小説は全体の主題を押さえよう
小説の問題は共通テストでも出題されているが、それに比した聖心女子大学の入試問題の特徴は、問題文全体を貫く主題を意識した設問が比較的多く見られる点にある。また、抜き出し問題についても、本文を広く見渡しながら正解を探す必要がある。もちろん、傍線部やその前後への着眼も大切だが、それ以上に、文章全体の主旨を捉え、登場人物の心情を的確に把握したい。
問題演習で抽象的文章に慣れる
本文全体への目配りの重要性という点は、評論の問題にもあてはまる。読解問題の設問は、数としては少ないが、本文の論旨に関わるものばかりである。文章読解の訓練が不足していると、論旨がつかめず、正解をとりこぼす事態に陥りかねない。設問形式はオーソドックスなので、標準的なレベルの問題集を用いて、様々な問題文に触れつつ解答能力を鍛える経験を重ねていきたい。ただし、その際には、単に答え合わせだけで済ませず、本文の内容理解の確認もおこたらないようにしたい。
記述問題は題意に沿った答案構成を
多くの受験生にとって一番の気がかりは、評論問題で課される記述問題への対応であろう。解答にあたって必要なのは、設問からの要求を冷静に把握したうえで、答案に盛り込むべき情報を本文から不足なく探し出し、適切な形に整えて文章化する力であり、これを養うには記述式の設問で実際に練習するのが一番である。よって、問題演習としては、選択式問題と記述問題の双方を含み、解説がしっかりした問題集を用い、解答後に正解の根拠をじっくり確認しつつ進めるのがよいだろう。