現代文
2023年度入試の問題分析
全学統一入学試験、英語外部試験スコア利用入学試験、給付型奨学金入学試験で共通して課された問題について説明する。基礎知識なしに理解することが難しい、レベルの高い文章が出題された。大学入学後に学術書を読みこなせる程度の読解力が求められている。扱われた主題は「事実の真理と歴史修正主義」「建築におけるポストモダン」。前者においては、ハンナ・アーレントの『過去と未来の間』からの多くの引用が含まれ、基本的にはその説明に終始しており、規範的な主張は明快だが、その妥当性の根拠が明快に述べられているわけではなく、理解が困難だった。後者は、建築と建築をめぐる言説が無差別に取り上げられており、また日本の建築が「空間的な現れの面では抽象性と現象的な表現を志向した」といった、にわかには理解しがたい文言も散見される文章だった。以上のように理解が難しい文章の場合、設問を解くにも若干の苦労を要するだろう。その文章のなかで重要性を持つ概念が、どのように規定されているのかを正確に理解しようとすることが大切。設問の形式は、2022年度から空欄補充がなくなり、傍線部説明、文章全体の内容理解がメイン。念のため様々な設問形式に慣れておいた方がよいが、何よりも高度な読解力が要求されている。
2024年度入試対策・学習アドバイス
様々な文章に触れる
前記のような傾向の入試問題に対応するには、狭義の受験対策だけでは困難かもしれない。設問への対処以前に、文章を読んで新しく何かを学ぶ経験を重ねておくことが望ましい。『ちくま評論選』(筑摩書房)のようなアンソロジーに目を通すのも有効な手段。楽しく読むことができれば、合格に近づく。わからなくて呆然とする経験も、読解力の向上には不可欠。
主題への意識
設問を正確に解くためには、論旨を正確に追い、内容を頭に残さなければならない。そのために不可欠なのが、主題に対する意識だ。主題とは、その文章における「説明の対象」である。言い方を変えると、読者が理解しなければならないことだ。通常はたったひとつしかない。その主題に対する説明が、残りの文章全体を占める。そして、「この部分は何を説明するためのものか」という意識を持つと、各部分の関連が見えやすくなる。そうすれば、理解した内容が頭に残り、理解したことを、実際に設問を解くときに生かせる。
読解の基本を身につける
評論を書くうえで、説明のための手段は限られている。「対比」「具体例」「言い換え」などがそれだ。当然、書き手にとっての説明の手段は、読者にとっては理解の手段だ。難しい文章であっても、これらに注目することが、理解のための第一歩になる。受験現代文のセオリーを身につけることは、読解力向上のためのシンプルな手段だ。
漢字と語彙力
漢字の学習は必須。日常ではあまり使用しないが、物事を説明したり理解したりするには必要不可欠な、多くの抽象的な言葉もその過程で覚えられる。言葉を覚えるときには、きちんと意味や用法を理解し、解くときには文脈を考えよう。難しそうに見える言葉に脅えて内容が理解できなくなるという事態だけは避けたい。余裕があれば現代文重要語を集めた参考書も利用して多くの言葉に触れてほしい。