フェリス女学院大学大学からのお知らせ ゼミ研究室紹介
掲載している内容は、2022年12月時点のものです
文学部 英語英米文学科
向井ゼミ
向井ゼミの1枚!
文学を学ぶとはどのようなことを行うのですか?
18・19世紀のイギリス小説を歴史や当時の社会を調べながら読み解いていきます。
単なる文学鑑賞ではないということですね。
文学作品は多くの社会問題を提議しているものとして捉え、今の社会とつながる新しい発見ができればと考えています。
社会の問題を提議するものとして文学作品を読み解く
研究テーマ
イギリスの小説から現代社会が抱える問題を考える
「文学作品は人生のシミュレーションをしているようなものです。どの時代の物語であろうと、そこで展開されていることは今の社会につながっていると考えています」と話す向井秀忠先生のゼミは、イギリスの小説を題材に、そのストーリーだけでなく、背景にある生活描写や考え方などを通して当時の文化を読み解きながら、社会の問題を考えていくのがテーマだ。
主に取り上げられるのは18・19世紀の作品。19世紀のヴィクトリア朝時代は特に功利主義的な価値観の影響が強く、今のグローバル化社会と非常によく似ている。自然選択という考えのダーウィンの進化論が発表された時代でもあり、自己責任の考え方と相まって貧しい人たちの救済は軽んじられた。経済格差や貧困など、小説の中で問題となっていることは今の社会が抱える問題に重なってくる。つまり、文学を読むことは、今、私たちの目の前にある問題について考えることでもある。
また、「文学はことばのレッスンにもなる」と先生は言う。「ことばは文字どおり以上の意味を持つことがあります。カズオ・イシグロの小説はその典型で、ある主人公は成功だったと語っているけれど、丁寧に読むと実はその語りには矛盾があり、人生に後悔しているという反対の読み方もできるようになってきます。ことばは相手にメッセージを伝える道具ではありますが、使い方によって逆の役割を果たすこともあります。ジョージ・オーウェルの作品も、ことばが表面的に意味することの裏にこそ真の意味があることを示しています。文学を学ぶとは、表面にだけとらわれずに真意を理解し、抽象的にも考えることができる能力を身につけることでもあるのです」
学びの進め方
作品分析を通して考える力と発表力、文章力を鍛える
ゼミでは、小説やそれを原作とした映画を題材にして作品を分析していく。最初は各自が自由に作品を読んで感じたことや調べたことを報告する。次に、「作品の中での色の使われ方の意味は?」「他の作品ではどのように描かれているか」など、ポイントとなるテーマを絞って、さらに深く読み解いていく。
発表はパワーポイントで要旨をまとめたものを示しながら行う。「最初は発表内容をすべて盛り込んでしまうため、文字数が非常に多くなります。しかし、それでは見ている人に不親切なので、発表の回を重ねるなかで情報を取捨選択できるようになってきます」また、各学期末にはレポートを書き、4年次には卒業論文を執筆する。
「発表も大事ですが、文章にまとめると、より考えを深めることができます。卒業論文で問題を発見し、反対の主張も調べ、比較し考察しながら文学作品をより深く読んでいく経験は、柔軟な思考力を身につける訓練になります。そうして身につけた思考パターンは、文学作品に限らず、就職活動におけるエントリーシートや、社会人になってからの資料やプレゼンテーションをまとめる際に生きてくると考えています」。
学生の声
「当たり前」に疑問を持つ批判的思考力が身についてきました
文学部 英語英米文学科
4年 J.N.さん
*学年・インタビュー内容は取材時のもの
『不思議の国のアリス』は私の好きなディズニー映画です。ところが、原作を読んでみると、自分が映画で感じた世界と違うという印象を受けました。そこで、この違いは何なのかを学びたいと思って、向井先生のゼミに入りました。
ゼミで作品を読み解くにあたっては、作家の生い立ちや行動、考え方、時代を踏まえて読んでいきます。そうすると、最初は理解できなかった主人公の言動の意味がわかってきて、価値観や物の見方・考え方の幅が広くなっていきます。自分の主観だけで物語を捉えるのではなく、違う視点から目を向けてみると、気づかされることがたくさんあります。例えば、両親と子どもがいて、母親が家事をする家族像がよく映像で描かれますが、「これは当たり前のことなんだろうか」という疑問も持つようになりました。物語の本筋でない描写からも、その時代や文化的背景などを読み解くことができると気づかされ、今後は自分が何かを発信するときも受け取り手のことをきちんと考えなければいけないと思うようになりました。
ゼミ活動の様子
事前に作品を読んだり、調べたりし、一人ひとりがパワーポイントに要点をまとめ、発表する。
報告の中でおもしろそうなポイントが出てくると、それをテーマに深堀りしていく。
年に数回、4年生は3年生を交えたゼミで、卒論の進め方や卒論を書くうえで困ったことなどを報告する機会を設けている。
1993年明治学院大学大学院文学研究科英文学専攻博士課程後期課程単位取得満期退学。松山大学法学部教授等を経て、2008年、フェリス女学院大学文学部教授に着任。専門は18・19世紀のイギリス小説で、歴史的な視点から作品分析を行う。
その他のゼミ研究室紹介
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