
掲載している内容は、2022年4月時点のものです
法学部 法学科
模擬裁判
模擬裁判の1枚!

裁判員制度の対象となる刑事裁判を、講義として模擬的に行っているんですよね。

はい、法廷を舞台にした演劇ではなく、可能な限り実際の裁判そのものを再現するようにしています。

裁判官や被告に限らず、証人、検事、弁護士もすべて学生です。ただし、裁判員だけは公募しています。一般の方が参加するのも、裁判員制度に近い模擬裁判だと言えるポイントです。
本編に続く
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裁判員制度で扱われる刑事裁判を再現
法の運用について、実践を通し理解を深める
講義の流れ
刑事手続の理解からスタート
一般市民が裁判員として参加する刑事裁判をシミュレートする科目「模擬裁判」は、小島透先生(刑法、刑事政策/刑事責任論、量刑論)と広瀬裕樹先生(商法、保険法)、弁護士の南阪本浩章先生(のぞみ総合法律事務所)が担当している。3人が常に講義に参加し、研究者と実務家、それぞれの立場から指導にあたる。
一般公開で開催する12月の模擬裁判に向け、4月の講義開始からしばらくは刑事手続や裁判員制度に関する講義を通して、裁判への理解を深める。同時に学生たちはグループに分かれて、いくつかの刑事裁判例を検討する。そのなかから教員と学生のそれぞれの意見を勘案し、模擬裁判で取り上げるテーマを決定。法廷で行われる審理のシナリオ作りが始まる。
模擬裁判は、それまでに学んだ法が、実際にどのように運用されるのか、実践を通して主体的に学ぶことを目的とする。学生への指導について、南阪本先生は「例えば、学生が自信を持って書いた台本に対し、私が専門的な観点から少し指摘します。学生は翌週、内容を見直し、再提出する。その熱意が周囲の学生に伝播し、全体の雰囲気が変わり始める。教員は学生を正解に導くのではなく、やる気に火をつけるようなサポートの立場で見守ります」と、その方針を説明する。
講義の特徴
単なる法廷劇でなく、本物の裁判を志向
学生の配役は、シナリオ完成後に決める。模擬裁判に取り組む学生と教員の全員で共有する目標は「法廷劇ではなく、限りなく本物に近い裁判を作り上げる」ことだ。審理を行う学生に対し、南阪本先生は、日々、法廷に立つ実務家の観点で指導。「裁判の手続きや起訴状、証人尋問、意見陳述などについても、実際の裁判を忠実に再現できるよう、法廷での動作や言い回しのリアリティを高めるため、かなり細かい点まで作り込んでいきます」(南阪本先生)。過去には、ドライブレコーダーで走行中の映像を撮ったり、証拠品の凶器として本物のような刃物(模造品)を用意したりした学生もいるという。
シナリオ作りと並行して、裁判員役としての参加を一般市民から募るといった広報活動も、学生が担当する。裁判員は本番当日、法廷での審理に立ち合い、検察官や弁護人、被告人や証人の意見を聞き、その後に続く評議で、被告人の有罪、無罪について、裁判官とともに話し合う。本物の裁判で評議は非公開だが、模擬裁判では評議を公開で行う。
限りなく本物に近い裁判を作り上げるうえで、審理のリアリティに加え、もうひとつのポイントになるのが、評議にはシナリオがないという点だ。裁判員と学生は、本番当日が初対面。裁判員の中には、法律の専門知識を持たない人もおり、さらに、裁判員の発言には制約をかけないため、どのような質問や意見が出されるのかは、その場にならなければわからない。予想外の展開になることさえあり得る。だからこそ「あらゆる質問に対応できるよう、学生は本番までに事件について議論を重ね、全員でイメージを共有することが不可欠」(南阪本先生)だと言う。裁判官役の学生にとっては、本番当日、争点に関係ない質問や意見を軌道修正し、時間内に結論に導くことも難しさのひとつだ。
講義で得られるもの
他者とともにひとつのものを作り上げた体験が、社会人としての力になる
法曹界を志望する学生にとって、「本物に限りなく近い」裁判を体験することは大きなモチベーションにつながるのは言うまでもない。ただ、法学部には公務員や一般企業をめざす学生も多い。「みんなで意見を戦わせ、ひとつのものをつくり上げていく体験を学生時代にできるのは意味があります。他者とともに物事を進めていく能力は、法曹界に限らずどのような業界・進路に進んでも求められるからです。模擬裁判はその訓練になると考えています」(南阪本先生)
学生の声

座学で得た知識の使い方を学べる機会に
愛知大学法学部卒業
愛知大学法科大学院 1年
N.R.さん
*学年・インタビューは取材時のもの
高校時代にある裁判を傍聴したことがきっかけで、法曹の世界をめざそうと思った私にとって、模擬裁判は非常に有意義でした。私たちのときは、「正当防衛」が成り立つかどうかを争点に選びました。日本の裁判では、検察官が起訴した時点で有罪の可能性が非常に高いのですが、模擬裁判では実際に起きた事件をベースにしつつも、議論ができるような内容に改変。参加した学生同士で意見が対立したこともありましたが、お互いに協力しながら準備を進めていきました。
法律の勉強は講義を聞いたり、文献を読むなど、受け身になりがちです。しかし、模擬裁判は具体的な事件とこれまでの講義などで学んだことを結びつけられたので、法律を適用するための要件は何かを理解する機会になりました。知識を習得するだけでなく、いかに使うのかを学べた講義でしたね。
指導教員
南阪本 浩章 弁護士
愛知大学法学部から愛知大学法科大学院に進学し、司法試験に合格。法学部卒業の翌年、2005年度に始まった模擬裁判については「法学部在学中に実施されていたら、絶対に参加していたと思います。法科大学院1年次は、模擬裁判に参加しているゼミの後輩がうらやましくて、自分の授業の合間によく顔を出していました」と話す。現在は、のぞみ総合法律事務所に所属し、民事・刑事の多くの裁判を手がけている。
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