愛知大学大学からのお知らせ 授業紹介
掲載している内容は、2023年9月時点のものです
法学部 法学科
模擬裁判
模擬裁判の1枚!
裁判員制度の対象となる刑事裁判を、講義として模擬的に行っているんですよね。
はい、法廷を舞台にした演劇ではなく、可能な限り実際の裁判そのものを再現するようにしています。
裁判官や被告は誰が担当するのですか?
裁判官や被告に限らず、証人、検事、弁護士もすべて学生です。ただし、裁判員だけは公募しています。一般の方が参加するのも、裁判員制度に近い模擬裁判だと言えるポイントです。
裁判員制度で扱われる刑事裁判を再現
法の運用について、実践を通し理解を深める
講義の流れ
刑事手続の理解からスタート
一般市民が裁判員として参加する刑事裁判をシミュレートする科目「模擬裁判」は、小島透先生(刑法/量刑論)と広瀬裕樹先生(保険法/責任保険の法的構造)、弁護士の南阪本浩章先生(のぞみ総合法律事務所)が担当している。3人が常に講義に参加し、研究者と実務家、それぞれの立場から指導にあたる。
授業では、一般公開で開催する12月の模擬裁判に向け、4月の講義開始からしばらくは刑事手続や裁判員制度に関する講義を通して、裁判への理解を深める。同時に学生たちはグループに分かれて、いくつかの刑事裁判例を検討する。そのなかから教員と学生のそれぞれの意見を勘案し、模擬裁判で取り上げるテーマを決定。法廷で行われる審理のシナリオ作りが始まる。
模擬裁判の目的について、「犯罪が成立する要件や刑事裁判の手続きなどを実践的に学び、刑法や刑事訴訟法の理解を深めること。もうひとつは、チームで物事を成し遂げる経験です」と語る小島先生。実務家の立場で授業に関わる南阪本先生は、「教員は学生を正解に導くのではなく、やる気に火をつけるようなサポートの立場で見守ります」と、指導方針を説明する。
講義の特徴
単なる法廷劇でなく、本物の裁判を志向
学生の配役は、シナリオ完成後に決める。模擬裁判に取り組む学生と教員の全員で共有する目標は「法廷劇ではなく、限りなく本物に近い裁判をつくり上げる」ことだ。審理を行う学生に対し、南阪本先生は、日々、法廷に立つ実務家の観点で指導。「裁判の手続きや起訴状、証人尋問、意見陳述などについても、実際の裁判を忠実に再現できるよう、法廷での動作や言い回しのリアリティを高めるため、かなり細かい点まで作り込んでいきます」(南阪本先生)。過去には、ドライブレコーダーで走行中の映像を撮ったり、証拠品の凶器として本物のような刃物(模造品)を用意したりした学生もいるという。
シナリオ作りと並行して、裁判員役としての参加を一般市民から募るといった広報活動も、学生が担当する。裁判員は本番当日、法廷での審理に立ち合い、検察官や弁護人、被告人や証人の意見を聞き、その後に続く評議で、被告人の有罪、無罪について、裁判官とともに話し合う。本物の裁判で評議は非公開だが、模擬裁判では評議を公開で行う。
限りなく本物に近い裁判をつくり上げるうえで、審理のリアリティに加え、もうひとつのポイントになるのが、評議にはシナリオがないという点だ。裁判員と学生は、本番当日が初対面。裁判員のなかには、法律の専門知識を持たない人もおり、さらに、裁判員の発言には制約をかけないため、どのような質問や意見が出されるのかは、その場にならなければわからない。予想外の展開になることさえあり得る。だからこそ「あらゆる質問に対応できるよう、学生は本番までに事件について議論を重ね、全員でイメージを共有することが不可欠」(南阪本先生)となる。裁判官役の学生にとっては、本番当日、争点に関係ない質問や意見を軌道修正し、時間内に結論に導くことも難しさのひとつだ。
講義で得られるもの
他者とともにひとつのものをつくり上げた体験が、社会人としての力になる
法曹界を志望する学生にとって、「本物に限りなく近い」裁判を体験することは大きなモチベーションにつながるのは言うまでもない。ただ、法学部には公務員や一般企業をめざす学生も多い。「みんなで意見を戦わせ、ひとつのものをつくり上げていく体験を学生時代にできることに意味があります。他者とともに物事を進めていく能力は、法曹界に限らずどのような業界・進路に進んでも求められるからです。模擬裁判はその訓練になると考えています」(南阪本先生)
学生の声
学生主体の取り組みで、刑法の理解が深まり、コミュニケーション力も向上
愛知大学 法学部
4年 N.M.さん
*学年・インタビュー内容は取材時のもの
模擬裁判では、メンバーのスケジュール管理や役割分担を行いました。意見が衝突したり予定どおりに進まなかったりと、組織をまとめる難しさに悩むこともありましたが、先生や先輩方、仲間の助言や協力で責務を果たすことができました。また、仲間と裁判をつくり上げるなかで、刑法の理解はもちろんのこと、伝わるコミュニケーションも学び大きく成長できたと実感しています。
今回のテーマは、窃盗罪と強盗罪を分ける要因になる「強盗における暴行・脅迫」でした。より現実に近い裁判をつくり上げるために、過去に起こった類似の事件を調べたり、設定した犯行現場での実況見分を行ったり、細部にわたる検討を重ねました。証人尋問の練習では先生から、「~ですよね」という言い回しで誘導尋問をしないようにとアドバイスをいただき、裁判に求められる厳密性を実感しました。
裁判官と裁判員が話し合う評議を通じて、被告人の人生を変え得る裁判員の役割の重さを知り、裁判員制度の意義を改めて考えました。
愛知大学法学部から愛知大学法科大学院に進学し、司法試験に合格。法学部卒業の翌年、2005年度に始まった模擬裁判については「法学部在学中に実施されていたら、絶対に参加していたと思います。法科大学院1年次は、模擬裁判に参加しているゼミの後輩がうらやましくて、自分の授業の合間によく顔を出していました」と話す。現在は、のぞみ総合法律事務所に所属し、民事・刑事の多くの裁判を手がけている。
このページに関するお問い合わせ
大学・部署名 | 愛知大学 企画部入試課 |
---|---|
Tel | 052-937-8112・8113 |