東京都立大学大学からのお知らせ ゼミ研究室紹介
掲載している内容は、2024年11月時点のものです
都市環境学部 地理環境学科
地形・地質学研究室
地形・地質学研究室の1枚!
人がとても小さく見えるほどに大きな地層の断面ですね。
これは山形県の新庄盆地にある断面で、今から約25万年前の火山噴出物を観察しています。
実際に火山噴出物の調査をすることで何がわかるのでしょうか。
いつ・どのような噴火で堆積したのかなど、何十万年前の噴火やそれによる地形の成り立ちを明らかにすることができるのです。
絡まった糸をほどくように地形・地層の成り立ちの不思議を探る
研究テーマ
火山灰をヒントに地形や地質の「なぜ」を解明することは防災にも役立つ
地図を見て「なぜこんな地形になっているんだろう」という純粋な興味から研究を始められた鈴木毅彦先生。「地形はあくまでも物の表面にすぎず、中身がわからないと実態に迫れません。逆に言えば、中身がわかれば、いつそういう形になったかが見えてきます。その意味で時間がかなり重要で、歴史学的な側面がある研究です」
地層の年代を特定するヒントになるのが火山灰だ。火山灰はそれぞれ微妙に成分が違い、まだ名前のついていないものを含めると500種類以上もある。よって、関東で見つかった火山灰を追っていくと、遠く東北の古いカルデラ火山のものだとわかったりすることもある。
また、平らなまま扇状地の形を残している場所と侵食を受けてギザギザになっている場所があったとする。これも火山灰を使って調べると50万年前にできた同じ扇状地だとわかることがある。すると、近くに深い海があって谷が入りやすいから、このような地形になったと見ることができる。このように「調べていくと、パズルを解くように、一つずつ抜けていたピースが見つかり、絡まった糸がほどけてくる」のが、この研究の面白さだ。
さらに、研究成果は防災にも役立つという。今や行政では様々なハザードマップがつくられている。しかし、本当に正しいものを作成するには、地中深くの構造を含め、正確に地形がわかっていることが非常に大事になってくる。
ゼミで身につく力
研究では予想しない困難に出合うこともあり、自分で考え解決する力が鍛えられる
地理環境学科では3年次対象のゼミと、4年次および大学院生のゼミがある。3年生はゼミや夏の長期の野外巡検を通して少しずつ卒業研究の構想を練り始め、4年生になる前に研究計画を提出することになっている。したがって、実質的には約1年半の時間をかけて卒業研究に取り組む形になる。
4月からのゼミでは毎回、2~3人が卒業研究の進捗状況を発表したり、大学院1年生だと研究テーマに関連する文献を紹介したりする。研究室は教授のほかに、少しずつ専門分野が違う准教授と助教の計3人の先生が所属する体制が採用されているので、自分の専門分野を深めるとともに、かなり幅広いテーマに触れることができる。
発表は1人20~30分で、その後には同じぐらいの時間をかけて質疑応答が行われる。そこで3人の先生や大学院生から鋭い質問が出るので4年生にとってはなかなかハードな時間だが、自分では気づかなかった指摘や有益な助言を得ることができる。
研究によって新しいことがわかれば、社会やその分野の財産になるが、研究を行ううえではいろいろな困難にぶつかる。「予測もしない事態にぶつかったときに調査の場所や切り口を変えるなど、どう路線を変更し、困難を解決するかを自分なりに考えること、それは研究に限らず、様々な場所で生きてくるはず」だと先生は話してくれた。
学生の声
ひとつのことを突き詰める研究は地道で大変だけど、学ぶことが多く楽しい
都市環境学部 地理環境学科
4年 S.D.さん
*学年・インタビュー内容は取材時のもの
火山が噴火したときに山体が大きく崩壊する現象があります。頻繁に起こる現象ではないものの、いったん起きると山をつくっていた過去の噴出物が高速で斜面を流れ下り、大被害を引き起こします。卒業研究では、そうした堆積物がどれぐらい広がり、どういう特徴があるかを明らかにしようと考えていて、約20万年前に南八ヶ岳が崩壊したときの日本最大と言われる韮崎岩屑なだれをターゲットにしています。どこにどれぐらいの厚さで堆積しているかを調査、計測し、体積を計算して先行研究と比較するには、実際に現地に足を運ぶ必要があります。ところが、植物が生い茂って堆積物が見えなかったり、求めていたものではなかったりすることもあります。本当に地道な作業と努力の積み重ねだと感じます。
ゼミでは定期的に進捗状況を発表します。本当にめざす堆積物なのか、それはどう判定するかなど、質問責めにあい、大変です。その反面、気づかされることも多く、着々と自分の研究がレベルアップし、実を結んでいくのが感じられ、充実感があります。卒業後は、学んだ研究手法や地理・地学の知識をコンサルティング会社で生かしたいと思っています。
3年次のゼミで行う大巡検
研究室では毎年夏に3年生が参加する4泊5日程度の大巡検を行っていて、2022年は北海道、2023年や山形・秋田に調査に出かけた。写真は、北麓から見た鳥海山。
伊豆大島南部、地層大切断面で観察できる火山噴出物。大巡検ではこうした地層や火山噴出物を観察したり、実際に礫の大きさを計測したりし、卒業研究に向けてフィールドワークについて学ぶ。
1991年東京都立大学大学院理学研究科地理学専攻 博士課程修了。理学博士。日本学術振興会特別研究員を経て東京都立大学の教員に。現在、同大学島嶼火山・都市災害研究センター長、日本第四紀学会会長も務める。専門は自然地理学、地形学、第四紀学、火山学。
その他のゼミ研究室紹介
- 人文社会学部 人文社会学科 福田研究室(表象文化論教室)
- 法学部 法学科政治学コース佐藤ゼミ(現代日本政治)
- 経済経営学部 森ゼミ(テキストマイニング)
- 理学部 物理学科 超伝導物質研究室
- 理学部 生命科学科 進化遺伝学研究室
- 都市環境学部 観光科学科 地理学研究室
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