東京都立大学大学からのお知らせ ゼミ研究室紹介
掲載している内容は、2024年12月時点のものです
システムデザイン学部 電子情報システム工学科/大学院 システムデザイン研究科 電子情報システム工学域
波動情報工学研究室
波動情報工学研究室の1枚!
小さな球が宙に浮いているように見えます。どんな仕掛けでしょう?
開発中の“空中音響ピンセット”の実験画像です。“音響浮揚”という技術によって小球を摘まもうとしているんです。
音響の技術で摘まむ、ってどういうことですか?
画面右にある半球状のアレイ(装置)から発する超音波の音の力によって、非接触で微細なモノを捉えることができる仕組みになっています。
世界は“波動”に満ちている。
身近に存在する波動現象を探り、技術につなぐ
研究テーマ
音響を中心に波動現象を追究する
大久保寛教授の波動情報工学研究室は、音響をはじめとする‟波動現象”全般を研究対象としている。
冒頭で紹介した「空中音響ピンセット」も、その成果の一例だ。‟音響浮揚 ”は数十年以上前から知られており応用例も多いが、先端技術を駆使して高性能なデバイスを作製することで、「完全非接触」でモノの捕捉や移動ができる「空中音響ピンセット」を開発している。非接触で微細なものを扱う場面、例えば化学や薬学、宇宙工学などに役立つ技術として期待されている。
こんなふうに波動がもたらす情報やその応用例は、実は身近に数多くある、と大久保教授は話す。例えば非破壊検査もそのひとつだという。
「非破壊検査では、検査対象の変形や劣化で変化する‟振動特性”を検知します。それは八百屋さんがスイカを叩いたり魚屋さんがハマグリを打ち合わせたりして、音の違いで中身を見極めたのと同じ理屈なんです」
昔ながらの知恵が、物理的にも理にかなった研究の原点となる。身近な波動現象と理論や技術を結びつけるのが、波動情報工学研究室のテーマといえるだろう。研究のべ―スとなるのは先進的な計測技術(センシング)と計算科学(コンピューティング)だ。現実世界にあふれる様々な波動を実測し、解析し、考察・検証することで、必要なデータの蓄積から実装の技術まで、幅広く研究を続けている。
研究室の特徴
興味を持った波動現象を、思い思いに追究できる
波動の研究は大きく分けて音波(音響)、電磁波(電界・磁界・光)、弾性波(地震波など固体を伝わる波)の3領域が挙げられる。通常はその一領域を掘り下げて研究することが多いなか、大久保教授の研究室では領域にこだわらず波動を扱う。
「音波も電磁波も地震波も、根底には基本となる波動方程式があります。空気を伝われば音、水や地面を伝われば津波や地震、宇宙でも伝わる電磁波というだけで、バックグラウンドとなる科学・数学・物理はよく似ているのです。だから波として扱えるものであれば、なんでも扱っていい、というスタンスです」
そのため研究室では、卒業論文をはじめとして学生の研究テーマの決定は各自の自由な選択を強く尊重している。加えて、無響室などの施設・設備や、他の研究機関との交流など、研究するのに必要な環境が十二分に準備されている。
研究の展望
波動現象全般を融合したイノベーションに挑戦
そんな環境が揃った研究室だからこそ、めざすのは2~3つの研究領域を組み合わせた新しいフレームワークの構築だ、と大久保教授は話す。
例えば今取り組んでいるテーマのひとつに「マイクロ波音響計測」がある。マイクロ波すなわち電磁波の一種が、条件によって振動や音波に変換される、そして時としてそれをヒトが音として知覚する場合がある、という現象を工学的に検証する研究だ。医学系の研究機関とも共同で行われている研究プロジェクトの一環である。
音波と弾性波の組み合わせでは、東京都などの自治体と連携して、津波を音で検知する可能性を探っている。「津波が起こるとき、水が空気を押し上げることでとても低い周波数の音(気圧変化)が発生します。もしも、その音を適切に安定して捉えられれば、そして、最新の計算科学を駆使することで、早期検知の情報として防災に役立ちます」。地震などの自然現象の把握はコンピュータ解析も重要だが、必要に応じてフィールドワークを行い、観測によって実際のデータの取得を行うことも、もちろんある。
さらに音響と最新の情報通信技術を結びつけて、バイノーラル再生というイマーシブオーディオ技術の研究などにも取り組んでいる。
「面白い現象を見つけてわくわくする研究をしよう! と仲間を募り、新たな可能性を探求する機会を見出すのが、今の私の仕事です」と、大久保教授が言うとおり、自由で多彩で奥深い波動の研究を行っている研究室だった。
学生の声
プロジェクト研究の一環を担い、学会発表に向けてデータを積み重ねています
システムデザイン学部 電子情報システム工学科
4年 S.I.さん
*学年・インタビュー内容は取材時のもの
情報工学のなかでもサイバー系の応用技術を志向して入学しましたが、学科共通の学生実験をきっかけに、計測を伴う研究に興味を持ちました。オシロスコープほか測定機器を駆使して現象を捉えようとする計測は地道な作業ですが、波動など身近な物理現象に直に触れ、得られたデータを解析していく過程に、実験・研究の醍醐味を感じました。
現在は電磁波のエネルギーが音響(音波)に変換される現象を検出するための基礎実験を行っています。 自分が担当しているテーマはまだまだ始まったばかりですが、複数の研究機関で実施している大きなプロジェクト研究の一環なので、外部の研究者と情報を交換する機会も得られるなど大いに勉強になります。
2025年は音響に関する日米合同の大きな学会があるので、いま取り組んでいるテーマでデータを積み上げ成果発表できることを目標に、日々の課題に取り組んでいます。
充実した研究環境
学生研究室に隣接して「電波音波無響室(Radio/Acoustic Anechoic Room)」がある。波動がいっさい反響しない無響室のなかでは、音波や電磁波を素のままで(ダイレクトに)測定することができる。
研究テーマの図。
大久保研究室を英語で表現するとWave Informatics Laboratory。 先端の計算科学(コンピューティング)と計測技術を駆使して波動現象を多方面から追い続けている。
東北大学大学院工学研究科電子工学専攻博士後期課程修了、博士(工学)。2007年より首都大学東京(現・東京都立大学)に勤務し、2024 年より現職。
その他のゼミ研究室紹介
- 人文社会学部 人文社会学科 社会学教室 社会調査法演習
- 人文社会学部 人文社会学科 福田研究室(表象文化論教室)
- 法学部 法学科政治学コース佐藤ゼミ(現代日本政治)
- 経済経営学部 経済経営学科 マーケティングゼミ
- 経済経営学部 森ゼミ(テキストマイニング)
- 理学部 物理学科 超伝導物質研究室
- 理学部 生命科学科 進化遺伝学研究室
- 都市環境学部 地理環境学科 地形・地質学研究室
- 都市環境学部 観光科学科 地理学研究室
このページに関するお問い合わせ
大学・部署名 | 東京都立大学 アドミッション・センター(入試課) |
---|---|
Tel | 042-677-1111 |
admission-tmu@jmj.tmu.ac.jp |