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とうきょうとりつ

東京都立大学

東京都立大学大学からのお知らせ ゼミ研究室紹介

掲載している内容は、2025年10月時点のものです

人文社会学部 人間社会学科
心理学教室

心理学教室の1枚!

心理学は非常に領域が広いと言われますが、先生はどのような分野を研究しているのですか?

心理学には、心のメカニズムを中心に研究する基礎分野と、対人援助などの現実社会への適用を研究する応用分野があり、この研究室では後者の臨床心理学を扱っています。

対人援助の研究とは何をするのでしょうか?

カウンセリングなどの専門家による様々な支援方法について、実際にデータを収集・分析して、よりよいあり方を研究しています。

様々なメンタルヘルスの問題をデータに基づいて分析・考察する

研究テーマ

心の健康(メンタルヘルス)に関わる問題をいろいろな角度から研究し、支援につなげる

臨床心理学を専門とされている勝又陽太郎先生の研究テーマのひとつが自殺予防だ。「日本で自殺者が急増したのが1998年のことでした。バブル経済崩壊の影響を受けた中高年男性を中心に自殺者が増え、その後も高止まり状態が続き、2006年には自殺対策基本法という法律がつくられました」そうした社会の要請を受け、研究すべきテーマだと考え、研究を始めたという。

自殺予防というと、どうしても自殺を考える本人ばかりに焦点をあてがちだが、その悩みを打ち明けられた周囲の人々や自死によって近しい人を亡くした遺族の心のケアなどに焦点をあてた研究も行われている。

「私たちは自殺予防を、①多くの人がリスクを持たないよう、どのように心の健康状態を保つのか、②今危機にさらされている人に対し、個別にどう関わっていくか、③自殺が起こってしまった後にどうするかの3段階で考えます。このように、一口に自殺予防といってもいろいろな角度から研究を行うことができます」と話す勝又先生は、ゼミに所属する学生とともに被災地のメンタルヘルスとその支援の研究も行っている。

例えば、被災地の自治体職員が住民らからバッシングを受けてしまうということがある。職員自身も被災者でありながら、自らの家族は二の次になってしまうなかで、どうすれば職員の心の健康も損なわれないように支援できるかを考えることが求められる。

勝又先生は「被災者のケアはもちろん大事ですが、私の研究室では、心理の専門職が個人に介入するよりも、コミュニティ全体に目を向け、いろいろな人が関わって、被災者を支えていくにはどうすればいいかを考えています」と話す。

演習での学び

人間はなぜこういう行動をとるのか、根底にあるものを明らかにする

勝又先生の研究室では3年次の特別研究で“ミニ卒論”に取り組む。前期はまず一人ひとりが自分の興味関心を持つテーマに関する文献を持ち寄り、その内容を発表し、ディスカッションを行う。これによってテーマが絞り込まれると、後期からは本格的に調査などを行い、進捗状況を報告する。

「研究テーマは心の健康、すなわちメンタルヘルスに関わることであれば、広く受け入れています。ただし、質問紙調査やインタビューなど、データを取ることが条件になります。例えば“声かけや話を聞いたことで効果があったのかどうか”を明らかにするためには“変化”を明らかにする必要があるので、単純に考えて前後2回の調査が必要になり、1年間で実施するには難しいものがあります。ですから、限られた時間のなかで何ができるかを考えてテーマを決めていきます」

調査方法や統計処理の基本は2年次の心理学方法論演習で学ぶが、実際に自分でやってみると勝手が違う。特別研究ではいかにテーマを絞り込み、どのような調査が必要で、調査の質問項目は適切かどうかなどを実地で学んでいく。

勝又先生は、「人間は本当に合理的ではないことをします。それを考えることが心理学のおもしろさの一つです」と話す。「命は大切ですと教えて人が変わるなら簡単ですが、そうはいきません。学生には、いい悪いではなく、まずは、なぜこの人はこういう行動をとるんだろうと関心や疑問を持ってほしいです。そうして人間の言動を単純化して考えるのではなく、なぜそれが起こっているのか、言動の根底にあるものをデータや理屈を使って深く考える。研究を通してそんな力を身につけてもらいたいと思います」

学生の声


心身の健康をトータルに考え、人がよりよく生きていける手伝いをしたい

人文社会学部 人間社会学科
心理学教室 4年 A.I.さん

*学年・インタビュー内容は取材時のもの

身体に何かしらの不調があると心の問題を抱えたり、逆にストレスで身体の具合が悪くなったりするように、心と身体は切り離せません。だから心身をトータルに見て健康について考えてみたいと思い、この研究室を選びました。

卒業研究では、働く20~30代の女性の月経随伴症状やその対処行動とセルフコンパッションの関係を調べようと考えています。セルフコンパッションは、「自分への思いやり」「自分への慈しみ」と訳せ、3年次のミニ卒論に取り組んだ際に先行研究を読んで興味を持った概念です。心身の健康にいい影響があるセルフコンパッションと月経関連の問題や症状、対処方法の関係を見いだし、将来的によりよい介入につなげられたらと、研究に取り組んでいます。

現在、調査のための質問紙の作成を進めています。最終的に統計処理ができるよう、設問の選択肢を設定するのはなかなか難しく、先生の助言をいただきながら試行錯誤しています。

今後は大学院に進学するつもりです。心理学を学ぶことで、私は改めて人間は不思議だけど、おもしろい生き物だと感じており、たとえ問題を抱えていても、うまく生きていけるような手助けができたらと思っています。

大学院生との交流で学びを深める

教員や大学院生が地域の方々の相談を受ける心理相談室を学内に開設し、そのケース・カンファレンスを毎週金曜日に実施。公認心理師資格の取得をめざす学部生も実習の一環としてオンラインで参加している。

夏には1泊2日の臨床ゼミの合同合宿を開催。学部生と院生が交流する機会を設けている。

指導教員 勝又 陽太郎 准教授

首都大学東京大学院人文科学研究科博士後期課程修了・博士(心理学)。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所自殺予防総合対策センター自殺実態分析室研究員、新潟県立大学人間生活学部講師等を経て、2020年より現職。専門分野は臨床心理学。主な研究テーマは、自殺ハイリスク者に対する支援や自殺予防教育プログラムの開発・実践など。

このページに関するお問い合わせ

大学・部署名 東京都立大学 アドミッション・センター(入試課)
Tel 042-677-1111
E-mail admission-tmu@jmj.tmu.ac.jp

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