<入試科目の掲載について>
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公立

とうきょうとりつ

東京都立大学

東京都立大学大学からのお知らせ ゼミ研究室紹介

掲載している内容は、2023年12月時点のものです

人文社会学部 人文学科
福田研究室(表象文化論教室)

表象文化論教室の1枚!

表象文化論教室

授業はどのように進めているのでしょうか?

これは、演習形式の授業で「メディア論」に関する書籍の講読を行っているところですね。参加者同士で議論することを大事にしています。

おお、なるほど。表象文化論教室では、どのようなテーマを扱っているのでしょう?

美術、音楽、演劇、文学といった比較的歴史の長い芸術ジャンルから、映画、広告、デザイン、ファッション、マンガ、テレビドラマに至るまで、あらゆるジャンルの作品、作家、運動などを研究対象として扱っています。

多様で複雑な芸術を対象に、文化的・社会的背景を掘り下げる

研究のジャンル

伝統的な芸術からポップカルチャーまで幅広く研究

現代社会に存在する芸術や文化の多様なテーマについて、思考を巡らせ研究を行っているのが、人文学科の表象文化論教室だ。表象文化論という学問領域について、この教室で指導にあたる福田貴成先生はこう説明する。

「表象文化論は、大きく言うと芸術を扱う分野です。ただ、非常に幅広い領域にわたり、様々な文化現象を対象にするのが、表象文化論の特徴のひとつです。絵画や演劇といった伝統的な芸術分野はもちろんのこと、映画やアニメーション、ポップスやロックといった、時代を反映する視覚や聴覚に関わる様々なポップカルチャーまでもがその対象となります。さらには、音楽配信のサブスクリプション・サービスのような、芸術経験のあり方を新たなかたちで支える技術や、「歌声」のありようを根本的なところで変化させてしまったボーカロイドのような、新しい技術が関わる事象も、考察の重要な対象です。あくまで一例ですが、DTM(デスクトップ・ミュージック)の普及と機材の価格との関係など、芸術表現を考えるうえでともすれば下世話にも思えるような経済的視点にも注目します。芸術を独立した「作品」として扱うのではなく、それをとりまく複数の文脈とのダイナミックな関係において考察するのが、表象文化論ならではのスタンスと言ってよいでしょう」

表象文化論は1980年代に生まれた比較的新しい学問分野だが、今では都立大をはじめ、全国の様々な大学に「表象」の語を冠した学科が置かれている。2006年に設立された表象文化論学会も順調に発展を続けており、芸術をあつかう人文学において欠くことのできない一分野と言っていいだろう。現在、表象文化論教室では、幅広い分野をカバーする5人の教員が活動し、学生を指導している。映像文化論を専門とする教員、文学をフェニミズムの観点から研究する教員、フランスの現代思想を専門とする教員、コンテンポラリーダンスなどの舞台芸術を扱う教員、そして今回登場いただいた福田先生は、聴覚文化論や音楽文化論を看板に掲げている。

研究テーマ

両耳聴がもたらす現象とインターフェイスの関わりを追求

19世紀以降の科学雑誌や医学書なども、
聴覚文化の歴史をたどる重要な資料となる

福田先生が研究テーマに据える聴覚文化論は、今世紀初頭に学域としてまとまった比較的新しい分野だ。アメリカで2003年に出版された論集『The Auditory Culture Reader』などがきっかけとなり、それまで個別に行われてきた音や聴覚に関する人文学的な研究を掘り起こし、系統立てることで発展してきた。そんななかで福田先生が注目するのが、聴くために使うインターフェイスやエンジニアリングの発達が関与する、文化的な現象にあるという。

「耳という器官についての理解の在り方が歴史を通じてどのように形成されてきたのか、そこに科学的・工学的・技術的な側面がどのように関わってきたのかを探求しています。特に、両耳聴すなわち左右2つの耳で聴取することを前提とするインターフェイスの歴史と、それが可能にしてきた聴くことの歴史が関心のコアにあります」

例えば、近年普及しているノイズキャンセル機能を持ったイヤフォン。ノイズキャンセルは、取り込んだ外部の雑音に対し位相が180度ずれた音を出して、電子的に打ち消してしまう仕組みだ。イヤフォンのノイズキャンセル機能は便利な反面、自分がその場にいるという感覚を消し去ってしまうという側面もある。その結果、電車などで乗り合わせた人々が空間を共有していながら、個々は別々の音響空間にいる状況が常態化していると、福田先生は教えてくれた。

「いながらにして聴覚的にはいないという人たちが、群れとして存在する現象は、公共性が持つ意味の変化にもつながるのかもしれません。このように、両耳聴とデバイスやインターフェイスの関係を考察し、文化的・社会的にどのような意味を持つのか思考を進めることが、聴覚文化論での私の重要なテーマになっています」

指導方針

好きに溺れながらもクールに追及!

表象文化論教室には、2年生から4年生までの学生が所属。ゼミ制はとらず、3年次後期から始まる卒業研究の際に、それぞれの研究テーマに沿った指導教員が個別に学生を指導するスタイルだ。しかし福田先生は、学生同士の横のつながりも重視した指導を心がけているという。

「学生同士の議論を大切にしたいと考えています。特にコロナ禍でオンライン中心になった時期にはそれを強く感じ、オンラインでも、ゼミの学生全員で集まって話せる機会をつくるように心がけました。今でも週に1度集まって、卒業論文の経過報告を行う会を設けています。友達の研究に対して必ず発言をして貢献し、同時に自分自身も伸びてもらうことを意図しています」

また、学生が卒業研究のテーマを決めて研究を進める過程での指導にも工夫があるという。学生の多くは、自分が好きで魅力を感じている対象を卒業研究のテーマに選ぶ傾向にあるが、単に好きなだけでは研究にはならない。

「学生には、自分が好きな対象について、どういう視点や方法・理論で、研究に落とし込んでいくかを、しっかりと考えてもらうよう促しています。単に好きなだけではダメで、冷静な距離を保ってロジカルに考えること、“好き”に溺れながらもクールに取り組むことが大切なんです。表象文化論の研究活動を通じて、自分の主張の論理性を武器にする力を身につけ、社会に出てほしいと考えています」と、福田先生は締めくくってくれた。

学生の声


新しい技術であるボーカロイドに注目し、
声に関する研究を進めています

人文社会学部 人文学科
4年 R.K.さん

*学年・インタビュー内容は取材時のもの

高校時代、軽音楽部で活動していたり、パソコンで作曲をするDTMをしていたりと、もともと音楽好き。そのため大学では、音響やエンジニアリング的な面から音楽に取り組みたいと考えていました。しかし、オープンキャンパスで東京都立大学を訪れたとき、表象文化論教室のことを知り、もっと幅広く音楽文化を学びたいと思い、進学を決めました。

表象文化論教室は、芸術系の幅広い事象について学ぶことができる環境があり、音楽以外にも様々なジャンルを学べることが魅力です。現在、取り組んでいる卒業研究のテーマは「声の拡張と逸脱」。声に関するテクノロジーの歴史を踏まえたうえで、ボーカロイドを巡るコミュニティなどの言動や、現在の音楽にどのような影響を与えているかなどを分析しています。ボーカロイドの声と人間の声を、等しいものとして受け入れている人もいれば、まったく別物として苦手意識を持つ人もいます。またボーカロイドを実際に使っている人や作品でも、使われ方は様々です。そのようなボーカロイドを巡る状況を考察していく予定です。

研究を進める中でSiriのような電子音声や、現代の音楽に使われる様々な電子的な仕組みなどにも目が向き、テーマが広がりつつあります。現在、大学院への進学を希望しており、もう少し研究を突き詰めていきたいと考えています。

先達が行った研究や論考を踏まえ、新しい自身の研究を積み上げる

福田先生が編集や寄稿で関わった聴覚文化に関する書籍。

福田先生が執筆した聴覚文化に関わる論考。

指導教員 福田 貴成 准教授

東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。中部大学講師等を経て、2016年に首都大学東京(現 東京都立大学)都市教養学部(現 人文社会学部人文学科)表象文化論教室に准教授として着任、現在に至る。2020年より表象文化論学会の理事を務め、2022年より事務局長を兼務。

このページに関するお問い合わせ

大学・部署名 東京都立大学 アドミッション・センター(入試課)
Tel 042-677-1111
E-mail admission-tmu@jmj.tmu.ac.jp

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