東京都立大学大学からのお知らせ ゼミ研究室紹介
掲載している内容は、2026年7月時点のものです
都市環境学部 観光科学科
生物多様性情報学研究室
生物多様性情報学研究室の1枚!

これは、どのような研究のフィールドワークなのですか?

都市部で、セミがどのような時間帯に鳴くのかについて検証・実験をしているんです。

木に何かを取りつけられていますが、何の作業をしているのでしょう。

セミの鳴き声を24時間記録するために、録音用レコーダーを設置しているところです。
自然環境と人間の関わりにフォーカスする
研究テーマ
フィールドワークを重視して自然と人間の関連を探る
南北に長い島国であり、豊かな山岳地帯も持つ日本列島は、多様な自然環境を備えている。その一方で1億人を超える人々が生活しており、自然環境と人間の営みは密接に関わってきた。大澤剛士先生が率いる生物多様性情報学研究室では、そうした自然や生き物と、人間社会との関わりに注目して研究活動を繰り広げている。
「この研究室では、特に人間の影響を受けた自然環境において、人間と自然がどのように関わっていくのかにフォーカスしています。人間の生活圏と身近な場所にある自然や生物は密接に結びついており、興味深い現象が数多く起こっています。これらの自然環境を適切に管理・保全し、持続的な利用を実現することをめざし、フィールドワークを中心に据えた研究を行っています」と、大澤先生は語る。
その対象は様々で、小笠原の離島などの自然公園から、大学のある多摩丘陵の里山、さらには身近な都市環境のなかにある緑地帯にまで及ぶ。また近年では、気候変動や侵略的外来生物の流入・繁殖など、自然環境や生物多様性への影響も深刻化している。研究に取り組む学生たちが、それぞれ問題意識や興味を覚えた事象から、日々新たな研究テーマが生み出されている。
研究例
都市部で夜に鳴くセミの生態を調べる
調査の対象となったニイニイゼミ
セミの鳴き声を24時間記録するために、条件の異なる場所にレコーダーを設置
同研究室の学生が取り組んできた研究の一例として、大澤先生が紹介してくれたのが、2026年4月に国際誌に発表された「都市部におけるセミの夜間発音(夜鳴き)」に関する研究だ。
身近な緑地や里山に生息するニイニイゼミやアブラゼミが日中に鳴いているのは誰もが知っている。しかし、都市部では夜間にもしばしば鳴き声を耳にする。これは都市化に伴う習性の変化ではないかと考え、多摩丘陵地域にある他大学の研究室と共同で実態調査を行った。
「街灯のある大学キャンパスと、街灯が一切ない近隣の里山の奥深くにレコーダーを設置し、24時間の音声を記録して比較しました。街灯がない場所では、日没の19時頃にパタッと鳴き止み、朝方まではまったく鳴きません。ところが街灯がある場所では、日没後も鳴き続けるという結果が得られたのです。明かりによる影響なのか、それとも都市部の気温なども関係しているのかまでは特定できていませんが、人為的な要因によってセミの習性が変化していることが推測できます」
この研究のきっかけは、担当した学生の「思わぬ気づき」にあったと大澤先生は明かす。
「彼はもともと、コオロギなどの鳴く虫に興味を持っていました。ところが、学部生時代にコオロギの研究をしていた際、『夜にセミが鳴いている環境では、コオロギがあまり鳴かない』ということに気づいたのです。そこから『なぜ都市部ではニイニイゼミやアブラゼミが夜にも鳴くのだろう』という疑問が生まれ、大学院での新たな研究テーマへと発展していきました」
学生の学び
学生の発想を研究に昇華させる手助けをする
セミの研究のように、この研究室では学生の気づきや興味から、日々新たな研究テーマが生まれている。大澤先生自身も、その「気づき」を何より大切にしているという。
「単に生物の生態を調べるだけでなく、自然環境や生態系と『人間社会との関係』に目を向けることが私たちの研究のベースにあります。その基本を押さえたうえであれば、学生が個々に興味を持ち、楽しんで取り組める対象をテーマにすることが何より大切です。研究活動は、辛いばかりでは続きませんから、自分が心の底からおもしろいと思えるテーマを選ぶよう指導しています」と、大澤先生は語る。
そのうえで、学生の自由な発想をいかに研究テーマへと「昇華」させるかが重要だと、大澤先生は強調する。
「ただし、単に『おもしろい』だけで終わってしまっては研究にはなりません。学生が科学的な見方や論理的な思考を重ね、それをどのようにサイエンスとして落とし込んでいくか、そのプロセスを手助けするのが私の役割だと思っています。そこから先は、学生本人の頑張りに期待ですね」
学生の声

都市内の小さな道路分離帯に生きる植物に着目
大学院 都市環境科学研究科
観光科学域
修士1年 N.K.さん
*学年・インタビュー内容は取材時のもの
もともと都市環境に興味を持ち進学したのですが、学ぶうちに自然環境と人との関わりについても学びたいと考え、この研究室に入りました。研究のテーマを学生が自由に選べるということも魅力でした。4年次は「都市緑地と生活する人のメンタルヘルスに与える影響」をテーマで研究しましたが、もっとフィールドワーク重視の研究に挑戦してみたい気持ちが強くなり、現在は大学院で新たなテーマに取り組んでいます。
現在の研究テーマは、「道路の分離帯における植物群集の形成」です。日常生活でよく目にする道路に挟まれた分離帯は人工的に造られたスペースですが、いつの間にか様々な植物が生え茂っています。これらの植物が分離帯にどのように運ばれて根付き、繁殖しているのかを明らかにする試みです。条件の異なる何ヵ所かの道路分離帯に50㎝四方の調査ポイントを定め、そこに生えている植物の種類を調べることから始めています。今後も継続し、季節ごとの変化なども追いながら、その群集形成がどのような理論に基づいているのかを推定していく予定です。まだ調査を始めたばかりですが、道路の分離帯というごく狭い空間に、思った以上に多種多様な植物が生きていることに、驚きとおもしろさを感じています。
クビアカツヤカミキリがもたらす被害を調査
外来昆虫であるクビアカツヤカミキリは、サクラやウメなどの樹木内部を食い荒らし枯らしてしまうため、特定外来生物に指定されています。近年、関東近郊にも広がり被害が報告されるようになり、その実態を調査しています。
その名の通り、黒く光沢があり首の部分が赤いクビアカツヤカミキリ。
成虫はサクラやウメなどの樹皮に穴を開け内部に産卵。生まれた幼虫が内部を食い荒らす。
クビアカツヤカミキリの被害を受けたサクラの老木。被害が広がれば枯死してしまう。
神戸大学大学院人間発達環境学研究科博士後期課程修了 博士(理学 神戸大学)。2010年より独立行政法人農業環境技術研究所・農業環境インベントリーセンター任期付研究員。2015年より同主任研究員。2016年より(研)農研機構農業環境変動研究センター環境情報基盤研究領域主任研究員。2018年より首都大学東京、都市環境学部/都市環境科学研究科准教授。2020年より現職。
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このページに関するお問い合わせ
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