東京都立大学大学からのお知らせ ゼミ研究室紹介
掲載している内容は、2024年12月時点のものです
人文社会学部 人間社会学科 社会学教室
社会調査法演習
社会調査法演習の1枚!

こちらは何をしているところでしょう?
学生が実際の高校に出向き、在留外国人の生徒の学習支援を行っているところです。
どのくらいのペースで行かれているのですか?
週2回ほどですね。演習では日本で働く外国人労働者の問題を扱っていて、実体験を通して問題意識を持ってもらうことを大切にしています。
日本で働く外国人労働者と
その子どもたちの現実から社会を考える
演習での取り組み
学習支援を通して外国人労働者の子どもたちが
抱える問題と支援の現実を知る

最近はレストランやコンビニで働く外国人も多く、多文化共生が叫ばれている。しかし、いわゆる「外国人」の在留資格や生活の様子、コミュニティについてはあまり目が向けられていない。丹野清人先生はその移民や外国人労働者に焦点をあてて調査・比較研究を行い、社会の在り方を探っている。
その一環として、社会調査法演習では神奈川県の公立高校で、日系人やコックなどの技能ビザで来日した人の子弟である外国籍の生徒の日本語学習支援を行っている。外国人労働者の扶養家族には家族滞在ビザが発行されるが、日本に居続けるには高校を卒業し、進学または就職して在留資格を変更する必要があり、そのためには日本語の習得が必須となる。
「この学校の生徒の親には子どもを塾に通わせるなどのリソースがありません。家庭が崩壊しているといってもいい子どもたちもいます。いろいろな問題を抱えながらも、なんとか日本に残りたいと思って無料の日本語教室に来て勉強しているんです。よく日本人の教育格差の問題が報道されますが、外国人労働者の子どもの教育格差はその何倍もひどいといえます」と、丹野先生。
1990年の入管法改正から受け入れが始まった日系人は日本の外国人政策のなかでは最も恵まれているといえるが、それでも本人の努力だけではどうしようもないことが多いのも事実だ。そこで一番恵まれた人の状況を引き上げていくことで、それより下にいる人たちも引き上げ、状況を改善できる可能性が出てくる。丹野先生はこのように考えて外国人労働者の問題に取り組んでいる。
演習での学び
2年次から複数の演習科目を通して
問題意識と社会へのシンパシーを養う

人文社会学部は2学科15教室で構成され、2年に進級するときに専攻(所属する教室)を決める。人間社会学科では各教室とも多くの演習科目が用意されていて、学生は2年次以降、並行して複数の演習を履修し、社会の様々な問題を学んでいく。
丹野先生が担当する社会調査法演習で中心となるのは前述の高校での学習支援で、学生には年間5回以上の支援活動の参加が課せられている。演習の時間には各自が支援活動で行ってきたことを報告し、それに対して長年、支援活動に携わる丹野先生だからこそわかる生徒個々の問題や背景を補足する。
「例えば中国人の子どもたちは漢字文化圏なので、非漢字圏の子どもに比べて日本語の習得スピードが速い面があります。逆に中国語の意味に引っ張られてしまうマイナス面もあって、日本語と中国語で同じ単語でも意味が違うものが多いため、それが原因で伸びが止まることに気づいた学生がいました。そうした学問的な気づきは人それぞれ違い、ゼミで報告してもらい、みんなで共有しています」
学生はいろいろな演習を通して体験的に社会の実際を知り、個々の興味関心を深め、問題意識を明確にしていく。そして、それが4年次の卒業論文のテーマとなる。
「社会学は自分が社会に対してどう思うかが一番重要です。社会は他者に対するシンパシーがないと理解できませんから、社会学を学ぶ以上は社会に対するシンパシーを持つ人になってもらいたいと思います」と丹野先生は話してくれた。
学生の声
実際に当事者と接することでわかることが多く、
社会を見る目が変わってきたのを感じる
人文社会学部 人間社会学科 社会学教室
3年 S.N.さん
*学年・インタビュー内容は取材時のもの
アルバイト先のレストランで働くネパール人に出会ったことをきっかけに、「どうして日本に来たのか」「どんな生活をしているのか」など、彼らのバックグラウンドに興味を持ちました。また、1年次の丹野先生の授業で、社会学では外国人労働者の研究もできるのだと知り、社会学教室を選択しました。2年次から社会調査法演習を履修し、可能な限り、高校での学習支援に参加しています。
学習支援では、日常生活ではわからない、外国にルーツを持つ生徒の置かれている状況や支援体制の問題が見えてきます。支援を通じて、外国人を同じ市民、同じ地域に住んでいる生活者として捉える視点を持てるようになりました。多文化共生も結局は個人個人のやり取りがベースになります。外国人というフィルターをかけ、ひとくくりにして見ているのでは、共生はなかなか進まないことを現実問題として学べました。また、生徒の学習効果を上げるために、国際教育や日本語教育の授業を取り、関連分野の知識を身につけることができました。
今後は、在留外国人のダブルワークをテーマに、卒業研究に取り組む予定です。また、卒業後は国際協力に関わる仕事をしたいと考えています。

一橋大学大学院社会学研究科社会問題・社会政策専攻博士課程単位修得退学。博士(社会学)。2002年東京都立大学人文学部社会学科専任講師、2014年から現職に。NPO法人女性の家サーラー理事、海外日系人協会評議員なども務める。研究分野は労働社会学、国際労働力移動、エスニシティ。
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