東京工科大学大学からのお知らせ ゼミ研究室紹介
掲載している内容は、2021年9月時点のものです
コンピュータサイエンス学部
複雑系データサイエンス研究室
複雑系データサイエンス研究室の1枚!

このグラフは2020年の株価の予想結果ですか。確か新型コロナの影響で昨年は3月くらいからかなり下がったと思いますが、下がっていませんね。
そうなんです。今、データを使った予測が進んでいますが、株価を予想するのは、コロナの感染率を予想するより難しいのです。
でも、データが増えて今後AIの能力が高まれば、もっと正確に株価の予想ができるようになるんじゃないですか?
100発100中は無理ですね。むしろデータが増えると逆になるかもしれません。というのも…
複雑な社会をAI予測するために必要な
不要なデータを見極める能力とロジックを学ぶ
研究テーマ
最も予測が難しいとされる株価予測モデルで鍛える
今あらゆる社会分野でAI(人工知能)によるシミュレーションや将来予測が行われるようになっている。その精度を支えているのが、データサイエンスだ。
瀬之口先生の「複雑系データサイエンス」研究室ではその名のとおり、複雑な要因が絡み合う社会のデータから的確な予測をするための研究に取り組んでいる。AIを使った予測や解析は、遺伝子工学や航空宇宙など様々な分野で活用されているが、瀬之口先生によると「なかでも金融の予測が最も難しいとされています」とのこと。実は瀬之口先生の前職は証券会社のアナリスト。独自にAIを使った株価予測モデルを開発し、8〜9割の高い的中率を維持してきた。しかも、日進月歩のIT(情報技術)やAIの世界で的中率を維持できるのは3年が限度と言われるなか、瀬之口先生が開発した予測モデルは3年を過ぎても高い的中率を維持していたという。
瀬之口先生が高い的中率を誇った最大の理由は、膨大で複雑に絡み合ったデータのなかから主要なデータをいかに絞り込めるかに注力したから。一般に、より的確な分析をするにはより多くのデータを取りこんで補正をかけることが重要になるが、予測の場合は逆効果になることがあるという。顔認識のように昨日今日で変化のないデータや、過去の出来事の原因を特定するような場合はたくさんのデータがあったほうが精度は上がる。だが、未来の予測になると取り込んだデータが予測精度を下げてしまうことが多いのだ。
例えば、2008年に起こった世界的不況「リーマンショック」を起こした要因となるデータを取り込んで、そこから予測しても次の世界的不況を的中させることは困難だ。
「起こったことを整理するためにデータをどんどん入れていくと、本来の要因とつながらないノイズのようなデータが結びついて一見重要な因果関係をつくったりするのです。一種の“だまし”です。だから未来を予測するときは、その“だまし”が起こらないように不要なデータをいかに取り除くかが大事になるのです」
研究室では学生が実際の金融データから予測モデルを考える。
「だいたい1回でうまくいきません。すると学生は火が点くようで、いろいろ考えて試行錯誤します。それでも大学卒業まで予測モデルはほぼつくれないです。おそらく世界トップレベルの優秀な学生でも大学4年生では複雑系の金融予測モデルは完成しないと思います。みなさん道半ばで卒業します」
研究室での学び
いま一番ワクワクすることに集中することで、未来は拓ける
しかし、最も難しいとされる金融予測モデルに挑戦した知識やノウハウは、実社会で役立つという。「金融予測モデルに比べれば、優しいからです。AIのなかの処理はブラックボックスといわれ、どういう論理でデータを結びつけているのかがわかりにくい。それでも思考錯誤を繰り返すうちに、絡みついたデータを少しずつ紐解いていくことができるようになります。企業の事業予測や成長予測などではどの企業でも求められることですし、また今だと駅や店などの混雑や人流の予測、物流の予測なども可能です。社会の様々な分野で力を発揮できると思います」
新型コロナで世界が一変したように、未来を的確に予測することは難しい。だからこそ複雑系データサイエンスは重要になる。
「複雑系データサイエンスは金融予測から始まりましたが、お金儲けのために予測技術を使うのではなく、もっと社会全体が豊かになるためにこの知識やノウハウを使ってほしいと思います。
私自身はもともと食糧問題を解決したいと思って、大学は農学部に進み遺伝子工学の研究をしていました。しかし、食糧問題は農業より経済の問題のほうが大きいと知り、経済分野の金融に進んだのです。AIを使った的中率の高い株価予測モデルを実現できたのは、その遺伝子工学で学んだ遺伝的アルゴリズムを応用できたからなんです。
だから受験生・高校生の皆さんに伝えたいのは、逆説的になりますが10年後20年後の未来を予測してそこから逆算して今なすべきことに取り組むという考え方より、今一番ワクワクすることに集中して、その直感に従って進路を選んでほしい。そのほうがより楽しい未来が拓けると思っています」
複雑系データサイエンス研究テーマ


AIには得意なこと、不得意なことがあるため、それを見極めて活用していくことも求められている。

過去20年のAIモデルでのシミュレーションでは、資産が約50倍に増加している。(TOPIXでは約1.5倍に増加)

東京工科大学コンピュータサイエンス学部教授。経営学博士。京都大学農学部卒業後、外資系証券会社に勤務しながら筑波大学大学院ビジネス研究科修了。名古屋商科大学教授などを経て現職。専門はAI(人工知能)・ディープラーニングを使った金融予測、社会予測など。
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