東京工科大学大学からのお知らせ ゼミ研究室紹介
掲載している内容は、2024年11月時点のものです
工学部 応用化学科
バイオマス・超分子材料学研究室
バイオマス・超分子材料学研究室の1枚!
これはどんな実験をしているのですか?
ポリマーに微細藻類の粉末を混ぜ合わせて、バイオマス樹脂を作製しています。
微細藻類を使うのはなぜですか?
天然物由来の素材を使い、脱石油材料の開発を促進するための取り組みです。
サステイナブル社会につながるバイオマス材料を開発
研究の目的
2040年を見据えたサステイナブル材料をめざす
2024年4月に新しく設立されたのが、入谷康平先生が率いるバイオマス・超分子材料学研究室だ。サステイナブル社会の実現に向けた微細藻類由来の樹脂の開発や、機能性のあるポリマーフィルムの開発を研究テーマにしている。
「低環境負荷のサステイナブル材料の開発をめざしています。特に脱石油材料ということを念頭にして、微細藻類や木材に含まれる成分といった天然物を素材として利用したバイオマスプラスチックの研究を行っています。またそれと並行して太陽光エネルギーを効率よく有効利用するために、光の波長を変える発光性フィルムの開発などを手掛けています」
現在手掛けている研究テーマはいずれも、環境負荷を低減し地球温暖化を食い止める持続可能な社会に求められる分野。主に2040年ごろの実用化をめざしている研究だと、入谷先生は話す。
「ちょうどこれから研究に携わる学生さんが、社会に出て中核となって活躍するのが2040年ごろでしょう。自分たちが研究開発した成果を社会に生かせるのが、彼らの世代です」
研究の成果
微細藻類をそのまま使うバイオマスプラスチック
東京工科大学での学部・学科をまたいだ横断的な研究の取り組みのなかで、応用生物学部の先生とのコラボレーションから、微細藻類を用いたバイオマスプラスチックの可能性が見出され、研究がスタートしたという。
「現在研究しているのは、乾燥した微細藻類を粉砕しポリマー材料と混ぜることで、プラスチック樹脂にするという取り組みです。植物を使ったバイオマスプラスチックは、これまでも多く研究されていますが、デンプンなどの成分を抽出し、発酵させるなどの製造工程でエネルギーを必要としますし、大きなプラントが必要なのでコストもかかります。そこで微細藻類をそのまま使ってポリマーと混合した新しいバイオマス樹脂を作製し、さらには強度や撥水性などを付与することで、既存のプラスチックを代用する材料にすることをめざしています」
現在は微細藻類としてクロレラやスピルリナを使い、それらを乾燥・粉砕したうえで、効率的にポリマーと混ぜる手法の開発を手掛けている段階だ。こういった微細藻類は、大気中の二酸化炭素を吸収しながら増殖するため、脱炭素の面からもサステイナブル社会につながる。将来的には、湖沼での増殖により水質悪化などの原因となるアオコなどの天然物の有効利用を考えている。またバイオマス由来のポリマーと混合することで、石油資源を一切使わないバイオマスプラスチックの実現も視野に入れている。
研究の応用
太陽光の波長を変換し有効利用するポリマーの開発
入谷先生が手掛けるもう一つの研究テーマが、太陽光を効率よく有効利用するための取り組みだ。植物は太陽光で光合成するが、太陽光に含まれるすべての光が利用されているわけではない。そこで太陽光に含まれる一部の波長を変換するフィルムを作り、利用できる波長の光を増やすという試みだ。
「これは凝集誘起発光を用いた技術ですが、発光性有機分子が結合したポリマーのフィルムに太陽光を透過させると、特定の領域の波長を変換することができます。光合成では青や赤の波長が使われる一方で、緑の波長や紫外線は使われません。そこで光合成に使われない2つの波長を変換できるポリマーフィルムをつくり、農作物栽培に太陽光をさらに効率よく有効利用することを想定しています」
この技術は農業利用のほかにも、太陽光発電の効率アップなどへの応用も考えられると、入谷先生は話す。また、発光性分子として、微細藻類由来などの天然物から得られる化合物を使うことも、想定しているという。
また入谷先生は、これから大学で学ぶ学生に向け、アドバイスを贈る。
「学びには終わりがありません。大学ではもちろん、社会に出てからも常に学ぶことがたくさんあります。そこで何にでも好奇心を持って、学びを楽しめることが大事だと考えています」
学生の声
天然物からバイオマスプラスチックを作製する研究に取り組んでいます
工学部 応用化学科
4年 O.S.さん
*学年・インタビュー内容は取材時のもの
2年次に受講した高分子化学の授業がとてもおもしろく、プラスチックなどの高分子材料に興味を持ったため、バイオマス・超分子材料学研究室を選びました。ここではどのようにしたら天然物をうまくプラスチックにできるのかを研究テーマとして追究し、これまで学んできた知識を直接実験に生かすことができます。現在、私が行っている研究は、天然物を使用してバイオマスプラスチックを作る研究です。この研究成果が実用化されれば、現在使用されている石油材料由来のプラスチックよりも大幅に二酸化炭素の排出量を削減することができます。石油資源の使用を削減することにもつながり、持続可能な社会の実現に貢献できると考えています。またこの研究室は、研究で困まったときにはすぐに周りの人や先生に相談できます。研究以外のことでも気軽に話すことができるいい雰囲気が魅力ですね。
バイオマス・超分子材料学研究室が手掛ける機能を持った合成ポリマー
微細緑藻とポリマーを混合して得られたフィルムは、写真のように折り紙にすることもできる柔軟性を備えている。
光の波長を変換するフィルムは、紫外線を植物が光合成に利用できる青色の波長に変換できる。
大阪大学大学院基礎工学研究科物質創成専攻博士後期課程修了、大阪大学大学院基礎工学研究科特任研究員を経て2018年から東京工科大学工学部応用化学科 助手。2019年より東京工科大学工学部応用化学科 助教。2021年から東京工科大学大学院工学研究科サステイナブル工学専攻 助教。2024年から現職。
その他のゼミ研究室紹介
- デザイン学部 工業デザイン専攻B研究室(酒井正教授 知育遊具・玩具デザイン)
- メディア学部 ミザンセーヌデザイン研究室
- メディア学部 デジタルジャーナリズム研究室
- メディア学部 サウンド×ヒューマン研究室
- 工学部 ヒューマンメカトロニクス研究室
- 工学部 材料グリーンプロセス研究室
- コンピュータサイエンス学部 社会情報専攻 サービスシステムデザイン研究室
- コンピュータサイエンス学部 情報セキュリティ研究室
- コンピュータサイエンス学部 複雑系データサイエンス研究室
- 応用生物学部 皮膚生理学研究室
- 応用生物学部 植物工学研究室
- 応用生物学部 腫瘍分子遺伝学研究室
- 応用生物学部 バイオプロセス工学研究室(応用微生物学、生物化学工学)
- 医療保健学部 臨床工学科 苗村研究室
- 医療保健学部 原田ゼミ(聴覚障害学)
このページに関するお問い合わせ
大学・部署名 | 東京工科大学 広報課 |
---|---|
Tel | 0120-444-903 |
pr@stf.teu.ac.jp |