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同志社大学

同志社大学大学からのお知らせ ゼミ研究室紹介

掲載している内容は、2025年4月時点のものです

生命医科学部 生命医科学科
システム生命科学研究室

システム生命科学研究室の1枚!

この写真は何をしているところですか?

RNAを抽出しているところです。研究室では、世界初となるRNAを発見したこともあります。

研究はどのように社会に活用されますか?

発見したRNAを使ってあるタンパク質の増加を抑えることで、糖尿病の予防と治療の可能性が広がると考えています。

生命のメカニズムを解き明かし、
病気の治療へ新たな扉を開く

学部紹介

医療とヒトに貢献する
プロフェッショナルを育成

医療や福祉、健康など「生命」に対する関心が高まる一方、その実現に対する社会的負担の軽減など多様な課題の解決が求められている。こうしたなか、これまで同志社大学が培ってきた工学研究の知識とノウハウに、医学や基礎生物学を融合することで、医療とヒトに貢献するプロフェッショナルを育成するべく設置されたのが生命医科学部だ。

機械工学と医学の融合分野で、先端医工学技術を学ぶ「医工学科」、情報・電子工学と医学が融合した分野を学ぶ「医情報学科」、分子生物学や細胞生物学など幅広い医学領域を探る「医生命システム学科」の3学科を設置。工学と医学を軸に広がる多彩な研究室のなかから、ここではシステム生命科学研究室を紹介する。

研究テーマ

活性酸素を除去するタンパク質を
制御し、糖尿病の治療に貢献

研究に用いるRNAは、食品由来成分を刺激することで培養した細胞から抽出している。写真は、ウエスタンブロットという手法で培養細胞からタンパク質を検出しているところ

ヒトを含めた様々な生物は酸素を利用して生命活動を行っている。一方で酸素を利用する過程では活性酸素が発生し、生体の重要な分子を酸化させて傷つけてしまう。病気の原因にもなると考えられている、「酸化ストレス」と呼ばれるこの現象をキーワードにして研究に取り組むのが、システム生命科学研究室だ。生命システムが機能を維持するうえで酸化がどのようにかかわっているかを解き明かすことで、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患、糖尿病やがんなどの生活習慣病に対する新たな治療方法の開発に向けた扉を開くことをめざしている。

「私が注目しているのは、セレノプロテインPというタンパク質の一種です」。そう語るのは、同研究室の三田雄一郎先生。セレノプロテインPは活性酸素を除去する働きを持っている。そのメカニズムを解明し、制御することによって糖尿病の治療薬を開発しようというのが、三田先生の研究だ。

ヒトの体のなかには、セレンという元素が微量ながら含まれている。セレンを含有するタンパク質は25種類あり、セレノプロテインPもその1つだ。セレノプロテインPはセレンを細胞に運ぶ働きをしており、減少すると、つまりセレンが細胞に届きにくくなると、動脈硬化やがんのリスクが高まることがわかっている。一方でセレノプロテインPの増加も悪影響を及ぼす。その1つが糖尿病だ。

「病気の原因にもなる活性酸素ですが、血糖値を維持するうえで重要なインスリンが適切に働くには、微量の活性酸素が必要なのです。セレノプロテインPが増加して活性酸素を除去しすぎると、インスリンが働くことができなくなります。そのため、糖尿病が悪化します。そこで、セレノプロテインPの増加を抑えることで糖尿病の悪化を防ごうというのが、私たちの研究です」

セレノプロテインPをはじめとしたセレンを含むアミノ酸は、DNA情報をメッセンジャーRNA(mRNA)にコピーするなどの過程を経て合成されていく。三田先生は、セレノプロテインPのmRNAの配列とまったく逆の配列を持ったL-ISTという遺伝子を世界で初めて発見。この遺伝子を用いることでセレノプロテインPの合成を抑制することに成功した。

糖尿病患者は予備群を含めると約2,000万人と推定されている。人口の高齢化などにともない、患者数は増加を続けている。三田先生の研究が治療薬の開発や新たな治療方法の確立へつながり、社会実装されることに大きな期待が寄せられている。

研究室の特徴

先入観を持たず
多様な視点で物事を見つめる

研究室では、糖尿病の予防に貢献する食品由来成分の探索や、研究室で発見した新しい遺伝子の機能解析などを展開。取り組みが多岐にわたるため、学生の興味にマッチするテーマを一人ひとり設定し、仮説を立てては実験で検証するというプロセスを積み重ねている。

研究を行ううえでは、目の前にあるデータに対して先入観にとらわれることなく、多方面から見つめることを重視している。見方を変えれば、実験結果が持つ意味や価値が変わることもある。学生はそういった経験を通して、物事には多彩な側面があることを学んでいく。

研究室に所属する学部生の多くは大学院へ進学し、研究を継続する。大学院修了後は、製薬会社、食品会社、化粧品会社へ就職する人が多い。

研究室紹介

分子生命分野 分子生命/予防医学研究室
新型インフルエンザやO157:H7感染症などの新興感染症を対象に、ペプチドを基盤とするオリジナルな創薬研究を進めています。また、京都市内の高齢者を対象とした健康増進プログラムの実施やアンチエイジング健診による経年変化の調査に加えて、抗糖化機能成分・抗酸化物質の分析や機能性食品の開発を行い、糖化ストレスや酸化ストレスが関与する予防医学の研究をしています。
神経科学分野 神経病理学研究室
アルツハイマー病の脳で見られる特徴的な病理変化である「老人斑」や「神経原線維変化」に着目し、これらの病理変化の原因究明から創薬まで幅広く研究を行っています。特に、アミロイドβタンパク質の産生機序の解明や抗アミロイド療法の開発、タウタンパク質の異常による神経変性メカニズムの解明を進めています。
神経科学分野 神経生理学研究室
中枢神経系の高度な情報処理における細胞応答や相互作用を解明し、神経系可塑性メカニズムやcAMP動態の解析を行っています。また、質量分析法を活用したタンパク質や代謝物、元素の総体的な変動解析を通じて、病気の発症に関与する分子を探索し、発症機序の解明を行っています。さらに、細胞特性を決定する生体微小環境に注目し、特に栄養因子と細胞運命決定を結びつける代謝制御を研究しています。栄養・代謝状態に影響を与える食品や天然化合物を特定し、運動器疾患の予防・治療法の確立をめざしています。
システム生命分野 システム生命科学研究室
生物に起こる生命現象をシステムとして捉え、生命システムの機能維持における酸化の関わりを軸に、糖尿病や神経変性疾患(アルツハイマー病やパーキンソン病)の発症メカニズムを明らかにする研究を行っています。また、新しい治療法やバイオマーカー、予防法の開発にも取り組んでいます。
システム生命分野 再生医学/遺伝情報研究室
再生医学研究では、肝線維化や肝癌の病態メカニズム解明と治療法の開発をめざし、細胞や動物モデル、臨床検体を用いた研究を行っています。また、マウスの移植モデルを用いた拒絶反応の解析と免疫制御にも取り組んでいます。遺伝情報研究室では、転写因子NRF3を世界に先駆けて発見し、その異常発現がガンを発症させることを明らかにしました。転写因子NRF3によるガン発症メカニズムの解明やガンの新たな診断法、治療法の開発をめざしています。
指導教員 三田 雄一郎 准教授

群馬大学工学部卒業、京都府立大学大学院農学研究科博士前期課程修了、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科博士課程修了。博士(医学)。京都府立医科大学医学部博士研究員、同志社大学研究開発推進機構特別研究員、宮崎大学医学部特任助教を経て現職。主な研究テーマは糖尿病発症メカニズムの解析、noncoding RNAによる翻訳制御。

このページに関するお問い合わせ

大学・部署名 同志社大学 入学センター入学課
Tel 075-251-3210
E-mail ji-nyugk@mail.doshisha.ac.jp

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